方向オンチの叫び

きっと私は死ぬまで道を間違っている。

 

 

よく道に迷うときに思うことだ。

 

私は俗にいう”方向オンチ”だ。

 

地図を見ようがグーグル大先生の指示を聞こうが

大体一人で歩くとあらん方向へ進み、

気づいた時には意味の分からぬ土地に立っている。

 

 

この難病に気が付いたのは15歳の時、

 

部活の試合会場まで自転車で向かったはいいが

家から目的地を結んだ線より右に35度ほどずれた方へと

進み続け、挙句近所のばあさんに

目的地の場所を聞いて辿り着いたころには試合が終わっていた

 

という事件だった。

 

 

なぜわからないのに進み続けるのか、と

聞かれたことがあった。

 

大学生になり付き合っていた彼女と

ラーメン屋に寄った帰りのことだ。

 

私は建物に入って用を済ませて出ると、

目指す方向と正反対に進み始めてしまうほど

極度のオンチなのだ。

どオンチだ。

 

よって、彼女と、

ニボシ出汁の効いたつけ麺を食べた後、

店から出た私は家と反対方向に進み始めた。

 

50メートルほど進み一人であることに気が付いた。

 

振り返ると彼女は店の前で怪訝な顔をして僕を見ていた。

 

 

何ごともないようにuターンして横まで来た僕に

「結構本気で引くくらい方向オンチやね、わからんのに何でそっちに進んだん?」

と、心底不思議そうに彼女は聞いた。

 

「確かに、なんでなんやろな」

 

と答えながら、心の中で思った。

 

分かんなかったら進んでないよ。

こっちだという確信があって進んだんだ。

ただこの方向オンチという病は、その判断を惑わせてしまうんだ。

 

 

この時、はたと思った。

 

仕事でミスをしたとき、上司に

「わからなかったなら間違う前に言ってよ」

 

といわれたことがある。

 

いや、わからなかったら聞いてたさ。

自分でこうだと確信してやった結果、

間違ってただけなんだ。

 

もちろん間違ったことに関しては反省しているし

人のせいにするつもりもない。

ただ、分からないことを聞かないことをとがめずに、

なぜ間違った判断に至ったかを一緒に考えてくれよ。

 

 

でも大体の人は間違った方向に進んだという

結果を嫌がる。

 

方向オンチに言わせてもらえばナンセンスだ。

 

実際に道に迷うような奴は、

確信をもって進んでることがほとんどなのだから。

 

 

などと、今日も見知らぬ土地で一人思う。